軽い接触が招く疲労
咀嚼筋は安静状態にあってもごくわずかに活動していますが、上下の歯が接触すると、それがたとえ軽い接触であっても、咀嚼筋の活動は強まります。強い噛みしめを長い時間にわたって続けるのは疲労感が伴って困難ですが、軽い接触では疲労に気づかず、そのまま接触し続け、それを長時間続けた後に、疲労し切ってしまうようになります。
Tooth:歯
Contacting:接触
Habit:癖
上下歯列接触癖
上の歯と下の歯が安静時においても継続的に接触されているという癖のことをいいます。
もともと生理的な上下歯列の接触は、会話、咀嚼、嚥下(飲み込み)をする時に瞬間的に生じます。しかし、その接触時間を合計しても、24時間中で17.5分と、1日に20分にも満たないことが報告されています。ところが、何かの作業をしている時や考えごとをしている時、テレビを見ている時などに上下の歯を触らせたままにする癖のある人がいます。こうした接触癖のことをTCHと言います。
咀嚼筋は安静状態にあってもごくわずかに活動していますが、上下の歯が接触すると、それがたとえ軽い接触であっても、咀嚼筋の活動は強まります。強い噛みしめを長い時間にわたって続けるのは疲労感が伴って困難ですが、軽い接触では疲労に気づかず、そのまま接触し続け、それを長時間続けた後に、疲労し切ってしまうようになります。
これまで顎関節症の要因としては、「片咬み癖」「不良姿勢」「多忙な仕事」などが挙げられてきましたが、実はTCHも、その発症・維持・永続化に少なからず関わっていると考えられるようになりました。
そしてTCHのある患者さんに対して、積極的にこの習癖の是正訓練を行ってもらうと、軽症の患者さんではこれだけで疼痛が消失したり、また長期間にわたって顎関節症の痛みに悩んでいた難治性の顎関節症の患者さんについても疼痛の改善が認められたりしました。
さらに、精神的要因や他の習癖行動があっても、TCHを是正すると症状が改善することが多いこともわかってきました。
つまり、TCHが存在する場合には、その是正は顎関節症の症状の改善に有効であることがわかってきたのです。
また、顎関節症以外に咬耗・WSD・知覚過敏・咬合痛・歯根破折・修復物脱離/破損・歯周病・カリエス・骨隆起・歯の圧痕などとの関連が考えられています。また肩こり・頭痛などの全身症状との関連もあるようです。原因不明の歯痛の方はTCHの可能性があります。